人形浄瑠璃文楽は三業とよばれる太夫、三味線、人形遣いの技で構成される人形劇で、その作品は殆ど江戸時代のものであり、その当時以前の「時代もの」と以降の「世話物」と呼ばれるテーマがある。江戸時代からそのままに演じられるも、現在は舞台は大きくなり、人形も一人から三人遣いへと変化する中、その所作もきめ細かく艶めかしく、そして更に芸術性を高めていったようです。

1月の新春文楽公演鑑賞に先立って、文楽の三業について各学芸員の方々に説明を伺いました。

IMG_1235 IMG_1234 豊竹希太夫(太夫)、竹澤 團吾(三味線)
太夫は独特の文字で詞章が書かれた「床本」を観ながら、様々な登場人物の台詞や気持ち、さらに背景となる場所の描写などを浄瑠璃で語ります。床本には語りの妙を表現する朱の書き込みが見られました。
三味線は太棹と呼ばれる大振りの棹で、太夫とともに浄瑠璃を語ります。その音のひとつ一つに、また余韻に、そして間に意味をもち、太夫とともに物語りを描いていくものでけっして伴奏ではありません。

IMG_6367 人形解説 吉田 玉誉(人形遣い)
文楽人形は主に三人で一体の人形を操ります。頭(顔)と右手は主遣い、左手は左遣い、脚は足遣いと呼ばれます。この三人遣いの技が見られるのは1734年からです。それぞれの使い手となるのは、足遣いがまず10年、そして左遣い10年を経て後に、主遣いへと出世します。
三身一体となった芸は主遣いの細かい合図により生み出され、頭の動きで左遣いに、腰(主遣い)の動きで足遣いに合図を送ります。人形は立役(男性)と女方がありますが、衣装や小道具を付けると10kg近くにもなり、それを一体となって滑らかに動かすのは大変な仕事です。
女方の人形は脚がなく、足遣いが衣装の裾をつまんだり、拳で褄持ち上げて膝を表現するなどおもしろい工夫がされています。
また主遣いは壇上では舞台下駄(15~30cm)を履いています。


初春文楽公演~冥途の飛脚 ・ 壇浦兜軍記

冥途の飛脚(めいどのひきゃく)から淡路町の段、封印切の段、道行相合かご ~飛脚問屋 忠兵衛は遊女梅川に入れあげ、店の金を遊女の身請けに使い込む。どうにか所帯は持つも、商に失敗し果ては二人して逃避行をするも捕えられてしまう。
事が発覚し、道行相合かごの逃避行となる二人の心情が、浄瑠璃の語りと三味線の音で叙情的に表現され、徐々に追い詰められて行く様子が愚かしく哀れに思われました.

壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)から阿古屋琴責の段
~平家の残党 景清を探すべく、その愛人で遊女の阿古屋(あこや)を捉えその行方を問う。
知らないと言い張る阿古屋に、拷問をする代わり、琴・三味線・胡弓を演奏させ、音の乱れからその真偽確かめようとする
琴・三味線・胡弓の生演奏と、その音にピタリとあった人形の所作に唯々圧倒された舞台でした。


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